冬になると、気づけば毎日のように首に巻いているマフラー。
防寒のためだけでなく、コーディネート全体の印象まで左右する、まさに「冬の相棒」のような存在ですよね。
ただ、私は長いあいだ、その相棒をとても雑に扱ってしまう人間でした。
「まだワンシーズンしか使っていないのに、なんだかくたびれて見える」
「毛玉だらけで、外に着けていくのを少しためらってしまう」
そんな経験を、正直に言って何度も繰り返してきました。
特に、少し背伸びをして買ったマフラーほど、
“どうしてこんなに早く傷んでしまうんだろう”
と、がっかりした記憶があります。
今だからはっきり言えますが、原因はとてもシンプルでした。
私は「素材の性質」と「扱い方」を、完全に見誤っていたのです。
ウールやカシミアといった天然素材は、たしかに暖かくて美しい反面、
きちんと理解して扱わないと、驚くほど早く風合いを失ってしまう繊細な素材でもあります。
この記事では、
・実際に私自身がマフラーを何枚もダメにしてきた失敗談
・そこから変えた日常の習慣
・なぜ毛玉ができるのかという素材レベルでの話
・ロエベのような高級マフラーを扱うときの考え方
まで、「使ってきた人間の実感」と「衣類ケアの基本知識」の両方から、正直にまとめています。
もしあなたが、
「お気に入りのマフラーを、できるだけ長くきれいに使いたい」
と思っているなら、きっと参考になるはずです。
マフラーの毛玉は「使った年数」より「使い方」で決まる
昔、ちょっと背伸びして買ったウール×カシミア混のマフラーがあります。
当時の私にとっては決して安い買い物ではなく、
「いいものだから、きっと何年も使えるはず」と、かなり期待していました。
ところが、です。
2シーズン目に入ったころには、首に当たる部分がはっきり分かるほど毛玉だらけになっていました。
正直、そのときはかなりショックでした。
「こんなに大事にしていたつもりなのに?」
「やっぱりマフラーって消耗品なのかな?」
そんなふうに、半ば諦めにも近い気持ちになったのを覚えています。
でも、何枚かマフラーを買い替え、使い比べ、
そして扱い方を変えていくうちに、ひとつはっきり分かったことがあります。
マフラーの寿命は、値段やブランドよりも、「どう使っているか」でほとんど決まる。
これは、完全に私自身の実感です。
実際、同じくらいの価格帯のマフラーでも、
扱い方を変えただけで、3年たっても見た目がきれいなものと、1〜2年でくたびれてしまうものの差が、はっきり出るようになりました。
なぜマフラーは毛玉だらけになるのか(仕組みの話)

冬の午後のやさしいひととき
「大切に使っているつもりなのに、なぜか毛玉ができる」
これ、以前の私もずっと不思議でした。
でも、素材の性質と使われ方を知ると、
むしろ毛玉ができないほうが不自然だということが分かってきます。
素材の問題(特にウールとカシミア)
ウールやカシミアは、
・あたたかい
・軽い
・肌触りがいい
という、マフラーにとって理想的な条件をそろえた素材です。
ただし、その快適さの正体は、「繊維が細く、やわらかく、表面にふくらみがある」という構造にあります。
つまり、裏を返せば、
とても絡まりやすく、摩擦に弱いということでもあります。
- 繊維が細い → ちょっとした刺激で動きやすい
- 表面がふわっとしている → 服やコートと引っかかりやすい
- 結果として → ほどけた繊維同士が絡み、毛玉になる
特にカシミアは、「高級=丈夫」というイメージとは逆で、
高級=とても繊細な素材です。
丁寧に扱えば驚くほど長持ちしますが、雑に扱うと、はっきりと傷みが見えてきます。
実は一番の原因は「首まわりの摩擦」
ここが、私がいちばん見落としていたポイントでした。
マフラーは、
- コートの襟
- ニットの首元
- バッグのショルダーストラップ
- マフラー自身の巻き込み部分
と、一日中、休みなく何かと擦れ続けています。
私は以前、
・ぎゅっときつく巻く
・歩きながら何度も位置を直す
・バッグのストラップが当たる側を気にしない
といった使い方をしていました。
今思えば、これは「毎日少しずつ毛玉を育てているようなもの」だったんですよね。
マフラーは、「着ている時間」より「擦れている時間」のほうが長い。
この事実に気づいてから、私は扱い方を根本から見直すようになりました。
毛玉取り器で「削りすぎた失敗」

優雅なスカーフのお手入れ
正直に言うと、私は昔、毛玉取り器でマフラーを1枚、完全にダメにしたことがあります。
それは、ウールが多めに入った、少し厚手のマフラーでした。
ある日、首元の毛玉が気になって、何気なく毛玉取り器をかけ始めたのがきっかけです。
最初のうちは、面白いように毛玉が取れていきました。
「お、きれいになる」「まだいけるかも」と、つい楽しくなってしまって、
同じ場所を何度も何度も、往復させてしまったんですよね。
そして、ふと手を止めて見てみると、
表面の毛が明らかに薄くなり、そこだけ色が変わったように見える状態になっていました。
触ってみると、
ふわっとしていたはずの質感はなくなり、
なんだか紙みたいにペラッとした感触に変わってしまっていたのです。
その瞬間、「あ、やってしまったな」と、はっきり分かりました。
毛玉は消えましたが、マフラーとしての“風合い”も一緒に削り取ってしまったのです。
このときに学んだのは、とても単純なことでした。
毛玉取りは「整える」ための道具であって、「新品に戻すための道具」ではない。
毛玉は、すでに表面の繊維が傷んで絡まった「結果」です。
それを取り除くという行為は、言ってしまえば、生地の一部を削っているのと同じことでもあります。
だからこそ、やりすぎればやりすぎるほど、
生地は確実に痩せ、薄くなり、寿命を縮めていくのです。
今は、毛玉取り器を使うときには、
・生地を軽く張った状態で
・力を入れず
・「ここだけ」と決めた範囲だけ
と、かなり意識的にコントロールするようにしています。
特に、カシミアやロエベのような高級マフラーに対しては、
「完全にきれいにしよう」と思わないことを、ひとつのルールにしています。
見た目を整えることと、寿命を削ることは、実は紙一重です。
この失敗をしてから、私は毛玉との付き合い方を、根本から考え直すようになりました。
今、私がやっている毛玉の取り方(安全重視)

スカーフのお手入れ時間
毛玉取り器でマフラーを一枚ダメにして以来、
私は「きれいにする」より「傷めない」ことを最優先に、やり方を完全に変えました。
今のルールは、とてもシンプルです。
- 毛玉取り器は軽く一往復だけ
- 目立つところだけに限定する
- 取りきろうとしない
一見すると、「それで意味あるの?」と思われるかもしれません。
でも、これくらいで止めたほうが、結果的にマフラーはずっと長持ちします。
なぜなら、毛玉はすでに「繊維が傷んだ結果」だからです。
それを削り取る行為は、どんなに丁寧にやっても、生地そのものを少しずつ薄くしているのと同じです。
だから私は、毛玉取りを「修復作業」ではなく、
「見た目を整えるための軽いメンテナンス」だと考えるようにしています。
特に、カシミアやロエベのような高級マフラーの場合は、
「7割きれいになれば十分」というところで、必ず手を止めます。
一度、完璧を目指してしまうと、
・もう少し…
・ここも気になる…
と、確実に削りすぎてしまうからです。
実際、このやり方に変えてからは、
同じマフラーでも、シーズンをまたいで見た目の劣化スピードがはっきり遅くなりました。
「今きれいに見えること」より、
「来年も普通に使える状態であること」を優先する。
それが、私なりにたどり着いた、毛玉とのいちばん現実的な付き合い方です。
毛玉を減らすために、本当に効果があった3つの習慣
マフラーを長くきれいに保つために、いろいろな方法を試してきました。
そのなかで「結局これが一番効いた」と胸を張って言える3つの習慣があります。
どれも特別な道具や知識はいりませんが、続けるほど違いが出ます。
① 帰宅したら“軽く”ブラッシングする
毎晩、玄関でマフラーを外したあとに、馬毛ブラシで軽く撫でるだけ。
このひと手間で、繊維の絡まり・ホコリ・毛玉の芽が驚くほど防げます。
以前は、「見た目が汚れていないなら何もしなくていい」と思っていました。
でも実際には、空気中の細かなホコリや静電気の影響で、毎日少しずつ繊維は絡まり始めています。
その“わずかな積み重ね”こそが、毛玉の芽になるのだと知りました。
ブラッシングを始めてから、2シーズン目の毛玉発生が明らかに減ったのを実感しています。
衣類ブラシは、日本繊維製品消費科学会でも推奨されているケア方法で、
摩擦を最小限に抑えながら表面を整える効果があります。
② “巻きっぱなし”にしない
以前の私は、帰宅後もそのままマフラーを着けっぱなしで家事をしていました。
でも、これは毛玉を育てているようなものだったんです。
コートの襟やセーターの繊維、バッグのストラップ。
マフラーは一日中、何かと擦れ合っています。
外したら形を整えて、単独でふんわり置くだけで、その摩擦がほぼゼロになります。
わたしは、リビングの隅に「マフラー専用のトレー」を置くようにしました。
それだけで、繊維の毛羽立ちが目に見えて減ったんです。
「きれいにたたむ」よりも、「休ませる」という意識。
それが、衣類と長く付き合う上でいちばん大切な感覚だと感じています。
③ “洗わない勇気”を持つ
これは意外に思われるかもしれませんが、洗濯こそ毛玉の最大の原因です。
洗濯槽の中では、他の衣類とこすれ合い、繊維が絡み、摩擦熱で表面が毛羽立つからです。
私は以前、冬の終わりごとにマフラーを洗っていました。
でもその結果、春先にはもう毛羽が立ち始めていることに気づいたんです。
それ以来、シーズン中の洗濯は1〜2回までと決めました。
厚生労働省の
衣類の洗濯ガイドラインでも、
ウールやカシミアなどの動物性繊維は「頻繁な洗濯を避ける」ことが推奨されています。
汚れが気になるときは、蒸気アイロンのスチームでリフレッシュする程度が理想的です。
「洗わないこと」は、手抜きではなく、素材を守る選択。
この考え方に変えてから、マフラーが年々“育っていく”ような感覚を持てるようになりました。
ロエベのマフラーを扱うときの考え方

スカーフのお手入れガイド
ロエベのマフラーは、もはや“防寒具”ではありません。
私にとっては、冬の装いを完成させる「繊細な服飾品」です。
特にカシミア100%のロエベは、繊維が細く、わずかな摩擦でも表面が変化します。
だからこそ、使うたびに「少し息を抜かせる」時間を設けるようにしています。
- 毛玉は完全に取らない(自然な風合いを保つため)
- 洗濯は極力避ける(摩擦と収縮を防ぐため)
- シーズン終わりは専門クリーニングへ
この方法に変えてから、もう5年以上、質感がほとんど変わっていません。
季節ごとに整えながら使うと、繊維の艶や光沢がむしろ深まっていくのが分かります。
ちなみに、経済産業省の「繊維製品の適正ケア」でも、
高級天然繊維製品は“専門業者によるケア”が最も安全と明記されています。
ロエベのようなマフラーこそ、プロの手を借りて“長く育てる”ことが、結果的に最も経済的です。
マフラーを買い替えるよりも、ひとつの布を大切に育てるほうが、心が豊かになる。
冬の暮らしにおいて、そんな時間の重ね方こそがいちばん贅沢なのだと、今は思っています。
専門クリーニングを使うようになって変わったこと

温かな陽射しとふわふわのスカーフ
正直、最初は「クリーニングに出すほどでもない」と思っていました。
でも、思いきってカシミアのマフラーを専門店にお願いした年から、明らかに手触りが変わったんです。
帰ってきたマフラーに手を滑らせた瞬間、
ふわっと空気を含んだような軽さが戻っていて、思わず「これ、本当に同じもの?」とつぶやいたのを覚えています。
自分では絶対に再現できない“繊維の呼吸感”があったんです。
- 風合いが落ちない(繊維の表面を保護しながら汚れを落とす)
- 型崩れしない(スチームと専用乾燥で自然なボリュームが戻る)
- 毛羽立ちの進行が明らかに遅い(繊維の流れを整える処理がされている)
専門クリーニングでは、繊維の種類や油分量を見極めて、洗浄方法を変えるそうです。
日本クリーニング協会でも、
ウールやカシミアなどの高級天然繊維は「一般洗濯では再現できない風合いを維持できる」と公表されています。
それ以来、私は「シーズンの終わり=プロに預ける日」と決めました。
最初は手間にも感じましたが、翌冬に箱を開けた瞬間の“新品のような肌触り”を経験してから、もう戻れなくなりました。
正直、クリーニング代だけを見ると、安くはありません。
でも、買い替え頻度を考えれば、むしろ経済的だと感じています。
農林水産省の繊維製品の持続可能な利用ガイドラインにも、
「長く使うことが最も環境にやさしい選択」とあります。
マフラーを毎年買い替えるより、ひとつを5年、10年と育てていく方が、暮らしに静かな誇りが残る。
そう気づかせてくれたのが、専門クリーニングでした。
よくある質問(FAQ)
実際にSNSや取材で「それ、どうしてますか?」と聞かれることの多い質問を、
わたし自身の体験と専門的な情報を交えてまとめました。
どれも「長く使う」ために欠かせない、現実的なポイントです。
Q. 毛玉は取らないほうがいい?
いいえ。目立つ部分だけ、軽く整える程度が正解です。
毛玉を完全に取ろうとすると、生地そのものを削ってしまいます。
繊維の専門家である日本繊維製品消費科学会も、
「衣類の表面を傷めないよう、必要最小限のケアを」と推奨しています。
Q. 毛玉取り器とハサミはどちらがいい?
基本は毛玉取り器。
広範囲の毛玉を均一に整えるのに向いています。
一方、ハサミはピンポイント用。
細かい部分や端の毛玉を、繊維を引っ張らずにカットできるのが利点です。
Q. マフラーはどのくらいの頻度で洗う?
シーズン1〜2回で十分です。
厚生労働省の
衣類の洗濯ガイドラインでも、ウールやカシミアのような天然繊維は
頻繁な洗濯を避けることが推奨されています。
どうしても気になる場合は、スチームアイロンで軽く整えるだけでも効果があります。
Q. ロエベやカシミアは自宅洗いしていい?
おすすめしません。
ロエベやカシミアのような高級素材は、繊維が非常に細くデリケートです。
家庭用洗剤では油分が落ちすぎ、風合いが失われるおそれがあります。
日本クリーニング協会も、
高級天然繊維は専門クリーニングでのケアが最適と明記しています。
Q. 毛玉ができたら寿命?
いいえ。ケアすれば何年も使えます。
毛玉は「繊維が少し疲れたサイン」であって、寿命ではありません。
丁寧に整えれば、むしろ風合いが深まっていくこともあります。
Q. ブラッシングは何を使う?
洋服用のやわらかいブラシ(馬毛など)がおすすめです。
ナイロン製ブラシのような硬い毛は、繊維を引っかけるおそれがあります。
ブラッシングは、毛玉防止だけでなく静電気対策にも効果的です。
Q. 収納時の注意点は?
ぎゅうぎゅうに詰めず、他の服と擦れないようにします。
私は、通気性のある布袋に入れて保管しています。
経済産業省の資料でも、
天然繊維は湿度変化に弱いため、風通しを確保する収納が推奨されています。
毛玉ケアのコツは、「完璧を目指さない」こと。
そのゆるやかさが、素材を長く生かす秘訣です。
まとめ|マフラーは「育てるもの」

マフラーのお手入れガイド
マフラーは、扱い方で寿命が2〜3倍変わります。
これは、何枚ものマフラーを“ダメにしてきた”私が、ようやくたどり着いた実感です。
毛玉も、くたびれも、実は「使った時間の証」でもあります。
それを“汚れ”ではなく、“味わい”に変えていけるかどうかは、日々の扱い方次第。
ほんの少しの意識で、同じ布がまるで違う表情を見せてくれるのです。
- こすらない(摩擦を減らす=毛玉の発生を抑える)
- 削りすぎない(風合いを保ち、繊維を守る)
- 洗いすぎない(天然繊維の油分を保つ)
- ちゃんと休ませる(湿気とストレスを抜く)
この4つを意識するだけで、お気に入りの一本は「毎年の冬の相棒」になってくれます。
特にウールやカシミアなどの天然素材は、日本繊維製品消費科学会や
経済産業省も示す通り、
「摩擦・湿気・熱」が劣化の3大要因です。
つまり、“洗うより、休ませる”ことこそ最大のケアなのです。
冬の朝、マフラーを首に巻く瞬間。
それが、単なる防寒ではなく、「今年も一緒に季節を越えていく」という小さな儀式のように感じられたら、
もうその布は、あなたの暮らしの一部になっています。
マフラーは、買うものではなく、育てていくもの。
その時間の積み重ねが、やがてあなたの“冬の記憶”になるはずです。
※素材ごとの正確なお手入れ方法は、必ず製品タグ・公式案内をご確認ください。
参考:日本繊維製品消費科学会/
経済産業省「繊維製品の適正ケア」