さつまいもの食感は大きく「ねっとり系」と「ホクホク系」に分かれ、紅はるかや安納芋はねっとり系、紅あずまや鳴門金時はホクホク系に入りますよ。
私自身、去年の秋にスーパーの野菜売り場で「紅はるか」と「紅あずま」が並んでいるのを見て、「どっちも同じさつまいもでしょ?」と思っていた時期があります。
そのときは両方を1本ずつ、合計300円ちょっとで買って、同じ条件でオーブン焼きにして食べ比べてみたんですよ。
紅はるかは冷めても指で押すとぐにゃっとつぶれるくらい柔らかく、断面はあめ色でスプーンですくえるほど。
対して紅あずまは、皮をむくとほろっと崩れて、栗のようにパサッとした感触が残りました。
もう別の野菜なのでは?と思うくらい違って、それ以来「品種名」を見て選ぶようになったんですよね。
今日はそんな「さつまいもの食感タイプ」について、紅はるかと紅あずまを軸に、じっくりほどいていきますね。
さつまいもの「ねっとり系」と「ホクホク系」って何が違うの?
一言でいうと、ねっとり系は加熱後にしっとり粘りが出るタイプ、ホクホク系は粉っぽくほろっとほどけるタイプですよ。
ねっとり系の代表格は、紅はるかやシルクスイート、安納芋。
加熱するとクリームのように粘質になり、まるでスイーツのような甘さと舌触りが楽しめます。
一方のホクホク系は、紅あずまや鳴門金時が代表選手。
栗のようにほろほろとした粉質で、口の中でほどける軽やかな食感が特徴です。
どちらが優れているというわけではなく、「焼き芋でとろける甘さを楽しみたいならねっとり系」「天ぷらやコロッケでほっくり感を楽しみたいならホクホク系」というふうに、作りたい料理や気分で選ぶのがポイントなんですよ。
比較すると、こんな感じに整理できます。
| 項目 | ねっとり系(紅はるか等) | ホクホク系(紅あずま等) |
|---|---|---|
| 食感 | しっとり・粘りがある | ほくほく・粉質 |
| 代表品種 | 紅はるか、安納芋、シルクスイートなど | 紅あずま、鳴門金時、高系14号など |
| 向いている食べ方 | 焼き芋、スイートポテト、干し芋 | 天ぷら、大学芋、ふかし芋、煮物 |
| 甘さの傾向 | 強い甘さを感じやすい | 品種によりさまざま |
個人的には、この二極化がここ数年ではっきりしてきた印象があります。
以前は「さつまいも=ホクホク」が当たり前でしたが、蜜芋ブームを境に、スーパーの店頭でも「ねっとり系」と明記された商品が増えた気がしますね。
ねっとり系の代表品種は?紅はるか・安納芋・シルクスイートの違い
ねっとり系の代表選手は、紅はるか・安納芋・シルクスイートの3つですよ。
紅はるかは農研機構が育成し2010年に品種登録された比較的新しい品種で、「従来品種よりはるかに優れる」という意味が名前の由来とされています。
クリーミーな強い甘みと、すっきりした後味が両立しているのが魅力です。
実際に食べてみると、冷めてもねっとり感が保たれるので、お弁当のおかずやスイートポテトにも向いていると感じました。
安納芋は鹿児島県・種子島の安納地方が名前の由来です。
水分が多く粘質性で、加熱するとクリームのようにねっとりとした食感になることから「蜜芋」とも呼ばれています。
調理すると鮮やかなオレンジ色になるのも特徴的ですね。
シルクスイートは、絹のようになめらかな食感が名前の由来とされている品種で、茨城県の生産者が育成に関わったことで知られています。
ねっとり系に分類されますが、いわゆる「ベタッと」した重さはなく、ホクホクとねっとりのハイブリッドのような口当たりだと紹介されることが多い品種です。
収穫直後はホクホク系に近く、貯蔵が進むにつれてしっとり感が増していく傾向があるようですよ。
この「収穫直後と貯蔵後で食感が変わる」という点、実は見落としがちなポイントなんですよね。
買ったばかりで「あれ、思ったよりホクホクしてる」と感じても、少し置いておくとねっとり感が増していくことがあるので、焦って「ハズレだった」と判断しなくて大丈夫ですよ。
このほか、ベニアズマに九州30号を交配した「クイックスイート」は低い温度でもデンプンが変化しやすく、電子レンジ調理でも甘みを感じやすいとされています。
シルクスイートの親品種にあたる「紅まさり(べにまさり)」は、ホクホク感としっとり感を兼ね備えたなめらかな口当たりが特徴だそうです。
ホクホク系の代表品種は?紅あずま・鳴門金時・高系14号の魅力
ホクホク系の代表選手は、紅あずま・鳴門金時・高系14号です。
紅あずまは1984年に「関東859」と「コガネセンガン」を交配して生まれた品種で、関東地方で現在もっとも多く流通しているさつまいもといわれています。
上品な甘味で繊維質、水分が少なく、口の中でほろりとほどける粉質が特徴です。
天ぷらなど、煮崩れしにくさが求められる料理に向いています。
高系14号は1945年、高知県農事試験場で早掘り用品種として育成された歴史ある品種です。
中部以西から西日本で多く作られており、加熱すると黄色くホクホクとした甘い芋になります。
この高系14号を土台に改良されたのが、徳島県の「鳴門金時」、石川県の「五郎島金時」、宮崎県の「宮崎紅」、鹿児島県の「紅さつま」など、各地のブランドさつまいもたちです。
鳴門金時については、掘りたてはホクホク感が強く甘みが薄いものの、収穫から一定期間熟成させると香りが上品になり、ホクホクの中にねっとり感が出てくると産地のJAの案内などで紹介されています。
ホクホク系も貯蔵によって表情を変えるというのは、なかなか興味深い事実ですよね。
なお、焼酎の原料としても使われる「黄金千貫」は、甘さ控えめであっさりした風味が特徴で、天ぷらや煮物など料理向きです。
紫色が美しい「パープルスイートロード」はアントシアニンを含み、しっとりなめらかな食感でスイーツにも使いやすい品種です。
紫芋はねっとり派?ホクホク派?パープルスイートロードと種子島紫
紫芋は品種によってねっとり系にもしっとり系にも分類され、一括りにできないのが実情です。
たとえば「パープルスイートロード」は紫色の果肉を持ちながら、しっとり・なめらかな食感で、蒸したり焼いたりするだけでも美味しく食べられると紹介されています。
果肉の色は加熱後も残り、青みがかった紫色になるのが特徴的です。
「種子島紫」は鹿児島県種子島で育てられている品種で、1998年に品種登録されました。
アントシアニンを豊富に含み、甘みはやや控えめですが、加熱することで風味が増し、スイーツ加工にも向いているとされています。
紫芋は見た目のインパクトが強いぶん、「紫芋=特別な食感」というイメージを持たれがちです。
でも実際には、黄色い果肉のさつまいもと同じように、品種ごとに粘質寄り・粉質寄りの違いがあるということですね。
彩りを楽しみたいスイーツ作りなどには、紫芋ならではの魅力があります。
なぜねっとり甘くなるの?β-アミラーゼと貯蔵の仕組み
さつまいもがねっとり甘くなる理由は、「品種の特性」に加えて「貯蔵」と「加熱の仕方」の2つが大きく関係しています。
さつまいもには「β-アミラーゼ」という酵素が含まれていて、これがデンプンを麦芽糖(マルトース)などの糖に変える働きに関わっています。
農研機構などの解説によると、この酵素は概ね70℃前後で働きが活発になり、この温度帯を一定時間キープすることが甘みを引き出す一因とされているんですよ。
だからこそ、電子レンジで一気に600Wで加熱するよりも、200Wや解凍モードでじっくり時間をかけて加熱したほうが、ねっとり甘い仕上がりに近づきやすいといわれています。
「高温で一気に」ではなく「低温でじっくり」がコツ、ということですね。
また、収穫してすぐの新芋は水分が多くさっぱりした味わいですが、適切な温度・湿度で一定期間貯蔵することで、品種によっては甘みや食感が変化していきます。
一般的な家庭保存の目安としては、さつまいもを新聞紙に包んで13〜15℃程度の冷暗所に置いておくと、追熟が進んでよりねっとり感が増すこともあるそうですよ。
焼き芋で徹底比較!ねっとり食感とホクホク食感を作り分けるコツ
同じさつまいもでも、包み方と温度設定を変えるだけで、ねっとり系・ホクホク系どちらの食感にも近づけることができますよ。
私が実際に試して仕上がりが良かったのが、塩水に1時間浸けてから焼く方法です。
作り方は次の通りです。
- 塩60gと水1リットルを混ぜて塩水を作る
- ジップ袋にさつまいも2本と塩水を入れ、全体が浸かるようにして1時間置く
- 水気を拭いてアルミホイルで1本ずつ包む
- オーブン160℃で90分、その後100℃に下げてさらに30分焼く
実際にこの手順で紅はるかを焼いてみたところ、皮の内側から蜜のような汁がにじみ出て、近所の石焼き芋屋さんの味にかなり近づいた感覚がありました。
塩を少し効かせることで、甘みの輪郭がはっきりする印象も受けましたよ。
電子レンジでねっとり食感を目指す場合は、次のような手順がよく紹介されています。
- さつまいもを濡らしたキッチンペーパーで包み、さらにラップでふんわり包む
- 電子レンジ200W(または解凍モード)で10分加熱
- 一度裏返し、さらに200Wで10分加熱
- 竹串がスッと通るか確認し、足りなければ2〜3分ずつ追加
- 加熱後はすぐ開けず、5分ほど蒸らす
ポイントは「600Wで一気に」ではなく「200Wでじっくり」なんですね。
急いで火を通すと水分が抜けてパサつきやすくなる一方、低出力でゆっくり加熱すると、でんぷんが糖化する時間を確保できて、ねっとり感が出やすくなるというわけです。
逆にホクホク食感を楽しみたい場合は、ラップをきつく巻きすぎず200Wで15分ほど加熱してふかし芋にしたあと、フライパンで表面に軽く焦げ目をつける方法が手軽です。
オーブンなら160℃で60〜90分、圧力鍋なら水を200mlほど加えて10分加圧するだけでも、ホクホクの焼き芋が作りやすいですよ。
ちなみに冷めた焼き芋を温め直すときも、この食感タイプの違いを意識すると失敗が減ります。
水分を飛ばしやすい電子レンジ(ラップなし・600Wで2分半ほど)は紅あずまなどホクホク系の温め直しに、じっくり熱が入るトースター(ホイルで包み低温で5〜6分)は安納芋などねっとり系の温め直しに向いていますよ。
考察:さつまいもの食感トレンドはこれからどう動く?
ここからは筆者としての見立てをお話しさせてくださいね。
ここ十数年のさつまいも市場は、明らかに「ねっとり系」への注目度が上がった時期だったと感じています。
安納芋や紅はるかがメディアで頻繁に取り上げられ、スーパーの店頭でも「蜜芋」「みつ芋」というキャッチコピーを見かける機会が増えました。
実際、私が3年ほど前に近所のスーパーを見て回ったときは紅あずま中心の品揃えでしたが、去年から今年にかけては紅はるかや安納芋の専用コーナーができているのを見かけることが増えました。
これは体感ベースの話ではありますが、店頭の並びが変わってきたこと自体が、消費者のねっとり系志向を裏づけている気がします。
一方で、私が興味深いと感じるのは、ホクホク系にも根強いファンがいるという事実です。
私の実家では祖母がずっと紅あずまで大学芋を作ってきたのですが、ねっとり系で同じレシピを試したところ、煮崩れしやすく、揚げたときの衣離れも悪くなってしまいました。
このとき初めて、「甘ければいいわけではなく、料理によって向き不向きがはっきりある」ことを体感として理解できたんですよね。
天ぷらや大学芋、煮物といった「おかず」としての使い道では、煮崩れしにくいホクホク系のほうが扱いやすいので、この需要はブームに関係なく今後も一定数残り続けるだろうと筆者は考えます。
さらに注目したいのは、シルクスイートのように「ねっとり系でもホクホク系でもない、しっとり系」という第三のカテゴリが登場してきている点です。
収穫直後はホクホクに近く、貯蔵が進むとねっとりに近づくという二面性を持つ品種は、今後も増えていくのではないでしょうか。
消費者側も「ねっとりか、ホクホクか」の二択ではなく、「熟成度合いによってグラデーションのように食感が変化する」という理解を持つことが、より美味しくさつまいもを楽しむコツになっていく気がします。
また、加熱方法の工夫によって、同じ品種でも食感をある程度コントロールできるという点も見過ごせません。
塩水に浸けてから焼く、低ワットでじっくり加熱するといった家庭でのひと工夫が、専門店に近い仕上がりを実現できるというのは、多くの家庭にとって朗報だと思います。
品種選びと調理法の組み合わせ次第で、自分好みの「理想の焼き芋」にかなり近づけられる時代になってきているのではないでしょうか。
なお、品種名や産地の詳しい系統情報をさらに確認したい場合は、農研機構や各都道府県の農業試験場が公開している品種登録データベース、JAの産地情報なども参考にしてみてくださいね。
よくある質問
さつまいもの食感は買うときの見た目で見分けられますか?
見た目だけでの判別は難しく、パッケージや値札の品種表示(紅はるか、安納芋、紅あずまなど)で判断するのが確実ですよ。
ホクホク系のさつまいもをねっとり食感に近づける方法はありますか?
品種そのものを変えることはできませんが、200Wなど低出力でじっくり加熱したり、しばらく貯蔵してから調理したりすると、しっとり感が増しやすい傾向があります。
紫芋は甘いですか、それともあっさりしていますか?
品種によって差がありますが、種子島紫のように甘みは控えめであっさりしたタイプもあれば、パープルスイートロードのようにしっとり甘さを感じやすいタイプもあります。
まとめ
さつまいもの食感は、大きく分けて「ねっとり系(紅はるか・安納芋・シルクスイートなど)」と「ホクホク系(紅あずま・鳴門金時・高系14号など)」の2タイプがあり、紫芋も品種によってどちらの傾向にもなり得ます。
食感を左右するのは品種そのものだけでなく、貯蔵期間や加熱方法も大きく関係していて、200Wでじっくり加熱すればねっとり、水分を飛ばすように加熱すればホクホクに近づけることができます。
「とろける甘さを楽しみたいならねっとり系」「料理に使うならホクホク系」というふうに、目的に合わせて品種と調理法を選んでみると、いつものさつまいもがもっと美味しく楽しめるはずですよ。
なお、店頭の価格や品種の入荷状況は季節や産地によって変動するので、最新の情報は店頭やJA・産直サイトなどで確認してみてくださいね。
ぜひ今度スーパーに行ったときは、品種表示にも注目してみてください。