さつまいも品種一覧で迷ったら、まず「食感タイプ」と「糖度」の2軸で見分けるのが一番の近道です。もっとも甘いのは紅はるかで、加熱後の糖度は50〜60度に達しますよ。
ねっとり系の紅はるかや安納芋、ほくほく系の鳴門金時や紅あずま、紫色が美しいパープルスイートロードなど、日本には主要品種だけでも約60種類、登録データベースには100種以上のさつまいもが存在しています。
この記事では、代表的なブランド品種から知る人ぞ少ない在来種まで、食感・色・糖度という3つの軸で整理してご紹介していきますね。読み終わるころには、スーパーの売り場で「これ、あの品種だ」と分かるようになっているはずです。
さつまいも品種はどれくらいある?在来種から新品種まで
さつまいもの品種は、思っている以上にたくさんあるんですよ。
農林水産省が公表している資料(2019年時点のデータ)によると、当時栽培されていた主要品種は約60種類とされています。
さらに品種登録データベースには100種以上が登録されており、遺伝資源として保存されている系統まで含めると、日本国内だけで約1,600品種、世界全体では2,000〜3,000種ほどが記録されているそうです。
ただ、実際にスーパーの店頭で見かけるのは十数種類程度。まずはよく流通している人気品種から覚えていくのが、遠回りのようで一番の近道だと私は感じています。
在来種としては、埼玉県川越市で栽培されてきた「紅赤(べにあか)」、通称「金時」が有名です。かつては「川越いも」と呼ばれ盛んに作られていましたが、現在は紅あずまへの切り替えが進み、希少性の高さから「富の川越いも」というブランド名で高級品として扱われるようになっています。
時代とともに主役が入れ替わっていく様子は、野菜の世界にも流行があるのだと実感させられますね。こうした品種の栄枯盛衰は、単なる懐古の話ではなく、消費者の好みが移り変わってきた証だと筆者は捉えています。
さつまいも品種一覧を「食感タイプ」で分類|紅はるか・安納芋・シルクスイート・紅あずま比較
品種選びで一番の壁になるのが「名前が多すぎて覚えられない」という悩みではないでしょうか。そこでおすすめなのが、食感で大きく分けて考える方法です。
さつまいもは、水分量とデンプンの質によって「ねっとり系」「しっとり系」「ほくほく系」の3タイプに分かれます。
水分が多くて糖化しやすい品種は加熱するとねっとりし、水分がやや少なく粉質の強い品種は栗のようにほくほくします。もちろん境界線上にある品種もあるので、あくまで目安として捉えておくとよいですよ。
近年は品種改良の主戦場がこの「食感」に移ってきているように見えます。かつての主流だったほくほく系から、スイーツのようなねっとり系へと、開発競争そのものがシフトしているのが今のさつまいも業界の特徴だと筆者は考えています。
ねっとり系の代表品種|紅はるかの開発経緯と甘さの秘密
ねっとり系の代表格は、なんといっても「紅はるか」です。
開発元は農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)九州沖縄農業研究センターで、品種登録日は2010年3月11日(登録番号:第19255号)とされています。形状の揃いが良い「九州121号」を母に、外観品質や皮色・食味に優れた「春こがね」を父として交配し、2007年9月に出願、2010年に正式登録されました。名前は、他の品種よりも外観・食味が「はるかに優れている」ことに由来しています。
その甘さは驚くほどで、生の状態で糖度約30〜35度、加熱すると50〜60度にまで達すると言われています。これは蜂蜜やイチゴジャムに匹敵する甘さで、他の品種と比べても数値のうえで頭ひとつ抜けています。
農林水産省の統計をもとにした業界資料では、2022年産でさつまいも全体の作付けシェア21.9%を占め、約60品種あるなかでトップの栽培面積となったと報告されています。登録からわずか十数年でここまで普及したのは、生産者・消費者双方から食味と見た目の両方が高く評価された結果だと言えそうですね。
宮崎県都城市は「べにはるか」誕生の地としても知られ、市町村別農業産出額で全国第2位という農業王国です。
開発の中心となった農研機構の甲斐由美さんは、農研機構が公開している育成者インタビュー記事の中で「これまでのホクホクしたさつまいもとは違う、しっとりねっとりした食感の良さを各県の試験場に理解してもらうのに苦労した」と振り返っています。この発言は農研機構の広報コンテンツとして紹介されているもので、開発期間は約10年に及んだとされています。
掘りたてでも十分甘く、形が美しく、農家が作りやすいことを目指して開発が進められ、収穫後は最低40日以上の熟成期間を経ることで、さらに甘みが増していく仕組みです。
もうひとつのねっとり系|安納芋と時短で甘い新品種あまはづき
安納芋は、鹿児島県種子島が発祥のブランド芋です。果肉はオレンジがかった濃い黄色をしており、糖度が非常に高く蜜のような甘さが特徴です。焼き芋にすると皮の外側まで蜜がにじみ出るほどで、スイートポテトなどのスイーツ作りにも向いています。
近年は新品種の動きも見逃せません。2021年8月に品種登録が出願公表された「あまはづき」は、一般的な収穫最盛期より早い8月(葉月)に収穫できることが名前の由来です。
紅はるかは収穫直後だとホクホクした食感で、ねっとり感と強い甘みを出すには1ヶ月以上の貯蔵が必要ですが、あまはづきは収穫直後からねっとりとした食感と甘みを持つのが特徴とされています。
さつまいもアンバサダー協会の橋本亜友樹さんが同協会の公式ブログに掲載した試食レビュー記事では、掘って2日目のあまはづきの甘みが「糖化促進させたべにはるかと同じぐらい」だったと報告されています。あくまで一つの試食レポートの範囲での比較ではありますが、貯蔵しなくても美味しく食べられる時代が近づいている可能性を示すデータだと言えそうです。
生産者にとって貯蔵は在庫リスクやコストの負担でもあるため、こうした時短型の品種は今後さらに存在感を増していくのではないかと筆者は見ています。
しっとり系・バランス型の代表品種|シルクスイートときみまろこ
紅はるかと安納芋の中間のような、上品な立ち位置にあるのが「シルクスイート」です。
名前の通り絹のようになめらかな舌触りが特徴で、ねっとりとほくほくの中間的な食感を持っています。関東から九州まで全国で栽培が広がっており、糖度は加熱後で約30度前後と、紅はるかや安納芋に比べるとやや控えめですが、その分しつこくない上品な甘さを楽しめます。
焼き芋はもちろん、ポタージュやスイーツにも合わせやすく、熟成させることで甘みが増していくため、たくさん買って長く楽しめるのも魅力のひとつです。
2024年に誕生した新しい品種「きみまろこ」も話題になっています。皮が白く、中身は卵の黄身を思わせる鮮やかな黄色をしており、まろやかな甘みが名前の由来です。10年の歳月をかけて開発された、まさに新星と呼べる存在ですね。
ほくほく系の代表品種|紅あずま・鳴門金時と金時ファミリー
昔ながらの素朴な味わいを求めるなら、ほくほく系の品種がおすすめです。
紅あずまは粉質でほくほくとした食感が特徴で、甘さは中〜やや強め。関東など東日本で多く流通しており、天ぷらや大学芋との相性が良い品種です。
似た品種に「紅こまち」があり、こちらは紅あずまの兄弟分にあたる存在で、千葉県香取市栗源町の特産として知られています。同町の生産組合が公表している資料では、栗源町産の紅こまちが全国流通量の大部分を占めるとされていますが、正確な割合は年によって変動するため、最新の数値は産地の公表情報で確認いただくのが確実です。
「鳴門金時」は徳島県鳴門市周辺で栽培されるブランド芋で、「高系14号」という系統をベースにしています。黄金色の果肉と上品な甘さが特徴で、煮崩れしにくいことから和食との相性も抜群です。
石川県の「五郎島金時」、高知県の「土佐紅」、茨城県の「紅こがね」なども高系14号を祖先に持つ、いわば金時ファミリーの品種たちです。ひとつの系統から各地の風土に合わせて枝分かれしていった様子は、まさに地域ブランドの成り立ちそのものだと感じます。
紫芋・オレンジ芋・白い芋──色で選ぶブランドさつまいも品種一覧
さつまいもは果肉の色によっても個性が大きく変わります。
紫色の果肉を持つ品種の代表は「パープルスイートロード」です。生の状態でも紫色をしており、加熱するとさらに深い色合いになります。
主に千葉県で栽培され、一般的に甘くないと言われる紫芋のなかでは甘みが強く、加熱後の食感はほくほく寄り。ペースト状にしてスイートポテトやモンブランにすると、見た目も楽しめるスイーツに仕上がります。
「種子島紫」は種子島原産で、やや甘みが強くねっとりとした食感を持ち、「ふくむらさき」や「ナカムラサキ」といった品種も鹿児島県・沖縄県などで栽培されています。
オレンジ系の果肉を持つ品種としては、安納芋のほかに「ハヤトイモ(隼人芋)」通称にんじん芋、熊本県山鹿地区のブランド芋「灯籠蜜いも(とろみついも)」などがあります。
灯籠蜜いもは安納芋をもとに改良された品種で、甘みが強くねっとりしながらも食感がしっかり残るのが特徴です。
白い果肉を持つ品種も存在します。「シロユタカ」や「コガネセンガン(黄金千貫)」は、もともとでんぷんや焼酎の原料として栽培されてきた品種で、甘みは控えめですがほくほくとした食感を持ちます。
コガネセンガンは主に鹿児島県・宮崎県で生産され、芋焼酎の原料として名前を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。南米ブラジル原産の「カイアポ芋・シモン芋」は、葉や茎も食用にされ、シモン茶の原料としても使われる少し変わり種の品種です。
見た目の色で個性を打ち出す品種が増えてきた背景には、SNSで「映える」食材が選ばれやすくなった消費行動の変化があるように思います。味だけでなく見た目の記憶に残りやすさも、今のブランド化戦略の重要な要素になっているのではないでしょうか。
甘さを数字で比較|紅はるか・安納芋・鳴門金時の糖度ランキング
「結局どれが一番甘いの?」という疑問には、糖度の数値で答えるのが一番分かりやすいですよね。加熱後の糖度を比較すると、次のような違いがあります。
| 品種名 | 生の糖度 | 加熱後の糖度 | 食感の特徴 |
|---|---|---|---|
| 紅はるか | 約30〜35度 | 約50〜60度 | ねっとり・蜜のような濃厚さ |
| 安納芋 | 約16度 | 約40度 | しっとり・とろけるような口どけ |
| 紅あずま | 約14度 | 約32度 | ホクホク・素朴な甘さ |
| シルクスイート | 約8〜9度 | 約30度 | なめらか・上品な甘さ |
| 鳴門金時 | 約10度 | 約13度 | ホクホク・栗のような風味 |
※上記は生産者団体や品種紹介資料で示されることが多い数値の目安であり、栽培環境や測定条件によって前後します。鳴門金時のように加熱前後の伸びが小さく見える品種は、粉質でデンプンが糖に変わりにくいという食感特性そのものを反映した数値だと捉えるとよいでしょう。
こうして並べてみると、紅はるかの糖度が頭抜けて高いことが一目瞭然です。加熱後の糖度で見ると、紅はるかは鳴門金時のおよそ4倍、紅あずまのおよそ1.6倍という差になります。この差の大きさこそが、この10年ほどでねっとり系品種の開発競争がここまで加速した理由なのだと筆者は考えています。1品種の登場が業界地図を塗り替えるほどのインパクトを持つというのは、野菜の世界ではそう多くはない現象です。
ただし、美味しさは糖度だけで決まるものではなく、食感や香り、後味といった要素が組み合わさって好みが形作られます。「とにかく甘いものが食べたい」なら紅はるか、「昔ながらのホクホク感が好き」なら紅あずまや鳴門金時、というように、目的に応じて選び分けるのがコツです。
なぜ紅はるかだけこれほど甘くなるのか。理由は大きく2つあります。ひとつは、デンプンを麦芽糖に分解する酵素「β-アミラーゼ」の活性が高いこと。もうひとつは、比較的低い温度から糊化が始まる「低温糊化型」のデンプンを多く含んでいることです。
さつまいもを65〜75℃でじっくり加熱すると、アミラーゼの働きでデンプンが糖化していきますが、80℃を超えると酵素そのものが壊れてしまいます。紅はるかはこの糖化がスムーズに進みやすい性質を兼ね備えているため、じっくり時間をかけて焼くほど甘みが引き出される仕組みになっているんですね。
ブランドさつまいもの見分け方と選ぶときのポイント
品種ごとの特徴が分かったところで、実際にお店で選ぶときのコツもお伝えしておきますね。
さつまいも全般に共通する見分け方としては、次のようなポイントが挙げられます。
- 皮の色が均一でツヤがある
- 持ったときにずっしり重い
- 形がふっくらしている
- 傷や黒ずみが少ない
- 両端に黒っぽい蜜状のあとがついている
特に最後の「黒っぽい蜜状のあと」は、「ヤラピン」という成分がにじみ出たものです。ヤラピンはさつまいも特有の白い乳液状の成分で、鮮度が良く糖化が進んでいる状態の目安になります。
生産者や種苗関連の資料では、紅はるかはこのヤラピンの含有率が比較的高い品種として紹介されることが多く、切ったときに果肉がやや白っぽく見えるのもこの成分の影響だと考えられています。
保存に関しても品種を問わず共通する注意点があります。さつまいもは低温に弱く、10℃を下回ると低温障害を起こして味が落ちてしまいます。新聞紙で一本ずつくるみ、10℃を下回らない場所で保管するのが望ましいとされています。
また、収穫から3週間以上経って熟成が進んだものほど甘みが乗って食べ頃になるため、購入時期や調理のタイミングの参考にするとよいでしょう。
私見|紅はるか一強時代からこれからのさつまいも品種はどう変わるか
ここからは記者としての見立てを述べさせてください。
さつまいも業界を見ていて印象的なのは、この10年ほどで「甘さ」を軸にした品種開発競争が一段と加速しているという点です。紅はるかが2010年の登録からわずか十数年で作付けシェア21.9%・栽培面積トップに躍り出た背景には、消費者の嗜好が「ホクホクした主食寄りの芋」から「スイーツに近いねっとり系の芋」へと大きくシフトしたことがあると筆者は考えています。
かつて焼き芋といえば紅あずまのようなホクホク系が主流でしたが、今やコンビニやスーパーの焼き芋コーナーでは蜜芋系の品種が主役を張るようになりました。加熱後の糖度で紅はるかが鳴門金時の約4倍という数値を叩き出している事実を踏まえると、これは単なる好みの変化ではなく、品種間の「甘さの物理的な差」が消費行動を後押ししたと見るのが妥当だと筆者は考えています。
同時に注目したいのが、「あまはづき」のような貯蔵しなくても甘い品種の登場です。紅はるかは美味しくなるまでに1ヶ月以上の熟成期間が必要ですが、これは生産者にとって在庫リスクや貯蔵コストの負担でもあります。さつまいもアンバサダー協会の試食レビューが示した「掘って2日目でも糖化促進した紅はるか並みの甘さ」という報告は、一つの事例に過ぎないものの、貯蔵期間という生産側のボトルネックそのものを解消しうる方向性を示している点で、単なる新品種の登場以上の意味を持つのではないかと筆者は見ています。
品種登録データベースの登録数が100種を超え、遺伝資源としての保存系統まで含めると国内で約1,600品種にのぼるという規模を踏まえると、今後も毎年のように新しい育成者権の出願が続くと考えられます。実際、あまはづきは2021年、きみまろこは2024年と、ここ数年でも複数の新品種が市場に登場しており、品種開発のサイクルが以前より短くなっている印象を筆者は持っています。
また、パープルスイートロードや種子島紫のような色を活かした紫芋、きみまろこのような白い皮に黄色い果肉という意外性のある品種など、味だけでなく見た目のインパクトで差別化を図る流れも強まっているように感じます。SNS映えを意識した紫芋スイーツの人気の高まりは、その象徴と言えるでしょう。
一方で、紅赤(川越いも)のように、かつての主流品種が希少なブランド品へと立場を変えていく例もあり、品種の栄枯盛衰そのものが、その時代の消費者の好みを映す鏡になっているようにも思えます。
品種改良には長いものだと10年単位の歳月がかかることを踏まえると、今スーパーに並んでいる品種は、10年前の生産者や研究者たちの試行錯誤の結晶とも言えます。読者の皆さんが手に取る一本のさつまいもの背景に、こうした地道な開発の歴史があることを知っていただけたら、味わい方も少し変わってくるのではないでしょうか。
まとめ|さつまいも品種一覧は食感と色で選ぶと迷わない
さつまいもの品種選びは、種類の多さに圧倒されがちですが、「食感タイプ」「果肉の色」「糖度」という3つの軸で整理すると驚くほどシンプルに見えてきます。
ねっとり系の代表は紅はるかと安納芋、しっとり系の代表はシルクスイート、ほくほく系の代表は紅あずまと鳴門金時。そして紫芋のパープルスイートロード、オレンジ芋の隼人芋、白いさつまいものコガネセンガンなど、色による個性も見逃せないポイントです。
日本には主要品種だけで約60種類、登録品種を含めれば100種以上のさつまいもが存在しています。まずは今回ご紹介した代表品種から、ご自身の好みに合う一本を見つけてみてくださいね。
焼き芋にするのか、スイーツに使うのか、煮物に仕立てるのか——用途に合わせて品種を選び分けられるようになると、さつまいもがもっと身近で楽しい食材になるはずです。
よくある質問
Q1. さつまいもの品種一覧の中で一番甘いのはどれですか?
現時点でもっとも糖度が高いとされているのは「紅はるか」です。加熱後の糖度は50〜60度に達し、蜂蜜やイチゴジャムに匹敵する甘さになります。安納芋も加熱後約40度と高糖度で、蜜のような濃厚な甘さが楽しめます。
Q2. ねっとり系とほくほく系の違いは何ですか?
主な違いは水分量とデンプンの質です。水分が多く糖化しやすい品種は加熱するとねっとりした食感になり、水分がやや少なく粉質が強い品種は栗のようにほくほくします。紅はるかや安納芋はねっとり系、紅あずまや鳴門金時はほくほく系の代表格です。
Q3. ブランドさつまいもにはどんな品種がありますか?
産地を冠したブランド品種としては、徳島県の「鳴門金時」、石川県の「五郎島金時」、宮崎県の「べにはるか」「宮崎紅」、埼玉県の「富の川越いも」、千葉県香取市の「紅こまち」などが知られています。多くは高系14号や紅あずまといった系統をベースに、各地の土壌や気候に合わせて栽培・育成されてきました。