結論からお伝えすると、さつまいもは品種によって「ねっとり系」「ホクホク系」「中間タイプ」に分かれ、紅はるか・紅あずま・金時(鳴門金時)・紅まさり・栗かぐやはそれぞれ違う個性を持つので、好みや料理に合わせて食感タイプで選ぶのが一番の近道ですよ。
スーパーの野菜売り場に並ぶさつまいもを見ていると、「紅はるか」「紅あずま」「金時」「紅まさり」など、いろんな名前が書かれていて、どれを選べばいいのか迷ってしまうこと、ありませんか。
私も以前は「さつまいもなんてどれも同じでしょう」と思っていたのですが、去年の11月に鳴門金時と紅はるかを同じ日に焼き芋にして食べ比べたとき、その違いに驚かされました。
鳴門金時は栗のようにほろりと崩れる食感だったのに対し、紅はるかはスプーンでとろけるほどしっとりしていて、まるで別の食べ物のように感じたんです。
この記事では、定番の紅はるか・紅あずま・金時(鳴門金時)に加えて、紅まさり、そして近ごろ話題の栗かぐやや紅天使といった新しい顔ぶれまで、違いと選び方をひとつずつ整理していきますね。
さつまいもの品種の違いは、まず「食感タイプ」で分けると分かりやすい
さつまいも選びで迷ったときは、まず「ねっとり系」「ホクホク系」「中間タイプ」という大きな3つのグループで考えると、ぐっと分かりやすくなりますよ。
ねっとり系は水分と糖度が高く、しっとり滑らかな舌ざわりが特徴です。焼き芋にすると蜜があふれるような食感になりやすい傾向があります。
ホクホク系は粉質で、口の中でほろりとほどけるような食感。天ぷらや大学芋、栗きんとんのような和菓子にもよく合います。
中間タイプは、ホクホクとねっとりのちょうど中間くらいの食感で、幅広い料理に使いやすいのが魅力です。
そしてもうひとつ大事なのが「貯蔵性」です。掘りたてのさつまいもはでんぷん質が多くやや粉っぽいのですが、時間をおいて追熟させることででんぷんが糖に変わり、甘みが増していきます。
同じ品種でも、掘りたてか、しばらく寝かせたものかで印象が変わるのは、このためなんですね。
紅はるかとは?とろけるような甘さのねっとり系代表
紅はるかは、皮の紫色が鮮やかで見た目も美しく、非常に高い糖度を持つねっとり系品種として知られています。
農研機構が育成した品種で、黄白色の果肉を持ち、加熱するとしっとり滑らかな舌ざわりになり、強い甘みがありながら後味はすっきりしているのが特徴です。
収穫時期は九州など暖地では10月頃から、本州では11月初旬あたりから始まります。掘りたてはやや粉っぽいのですが、保存して2〜3週間ほど経つと粘り気と甘みが増していき、食べ頃の旬は11月から1月頃とされています。
保存するときは、湿度が高い場所や直射日光を避け、風通しの良い場所に置くのが基本です。気温が20度を超える時期は常温では傷みやすいため、冷蔵庫の野菜室で保存するとよいでしょう。
ただし低温になりすぎると糖度が下がることがあるので、新聞紙やキッチンペーパーで包んでから保存すると、湿度を調整しながら保存できますよ。
焼き芋はもちろん、干し芋やスイートポテトなど、しっとり系ならではのスイーツ用途にも特化した品種といえます。皮の色が鮮やかで黒っぽい蜜のようなもの(ヤラピン)が付いているものは、新鮮でおいしいサインとされているので、選ぶときの参考にしてみてくださいね。
紅はるかがここまで支持を広げた背景には、専用の器具を使わない「石焼き芋専門店」の広がりと、家庭のオーブンやトースターだけで蜜のような甘さを再現できる手軽さの両方があると筆者は感じています。
実際、近所のスーパーでも数年前までは店頭になかった「紅はるか」という品種名が、今では真っ先に目立つ位置に並ぶようになったのを見て、この数年の人気の伸びを肌で感じました。
紅あずまとは?関東で親しまれるホクホク系の定番
紅あずまは、濃い赤紫色の皮と黄色い果肉が特徴のホクホク系(粉質寄り)品種で、関東地方を中心に古くから親しまれてきました。
繊維が少なめで食べやすく、加熱するとほくほくとした食感になるため、焼き芋や天ぷら、大学芋といった料理に広く使われています。
近年は紅はるかのようなねっとり系人気の陰に隠れがちですが、素材の味をしっかり感じたい料理や、油との相性を活かした天ぷら・大学芋を作るときには、紅あずまのようなホクホク系のほうが向いていることも多いんですよ。
ちなみに、紅あずまと系譜が近い新品種として「栗かぐや」が育成されており、後ほど詳しくご紹介します。同じホクホク系でも、貯蔵性や糖度に違いがあるのが面白いところです。
筆者としては、甘さの強い品種が話題になりやすい今だからこそ、紅あずまのようにクセがなく脇役に徹してくれる品種の存在感を見直したいと感じています。
煮物やお弁当のおかずのように「主張しすぎない甘さ」が求められる場面では、今も紅あずまに軍配が上がる場面が多いのではないでしょうか。
金時(鳴門金時)とは?上品な甘さと栗のような食感
「金時」と呼ばれる品種のなかでも特に有名なのが、徳島県で栽培されている鳴門金時です。
鳴門金時は、栗のようなホクホクとした食感と上品な甘さが特徴で、さつまいもの中でも比較的糖質が少なめとされています。徳島県の鳴門市周辺は水はけのよい畑作地帯で、この土壌環境が鳴門金時ならではの上品な味わいを支えているといわれています。
甘さは紅はるかほど強くありませんが、そのぶんクセがなく、煮物や汁物の具材、和菓子の材料としても使いやすいのが魅力です。おせち料理の栗きんとん風の一品や、大学芋にもよく合いますよ。
糖質量を気にされている方にとっては、こうした比較的糖質が少なめの品種を選ぶというのも、ひとつの工夫になりそうですね。
鳴門金時が長年ブランドとして定着しているのは、単に味だけでなく「鳴門産」という産地の物語がセットになっているからだと筆者は考えています。
品種名だけでなく産地の背景まで含めて選ぶという視点は、これから他の品種を選ぶときにも参考になりそうです。
紅まさりとは?ホクホクとしっとりの中間で使いやすい実力派
紅まさりは、しっとりとホクホクの中間くらいの食感を持ち、やさしい甘さが特徴の品種です。
収穫期は7月下旬から11月頃までと比較的長く、収穫直後からでも食べられますが、熟成させることでさらに甘みが増していくといわれています。焼き芋や蒸し芋はもちろん、じっくり熟成させて楽しむのにも向いている品種です。
実はこの紅まさり、次にご紹介する新品種「栗かぐや」の親品種のひとつとしても知られています。クイックスイートという品種と紅まさりを交配した系統から選抜されて生まれたのが栗かぐやなのだそうです。
ホクホク系でありながら食味と流通面での強みを両立させたいという育種の狙いが、この組み合わせからもうかがえますね。
新顔「栗かぐや」と「紅天使」もチェックしておきたい注目品種
ここ数年で名前を聞くようになった新品種として、「栗かぐや」も見逃せません。
栗かぐやはカネコ種苗が開発した登録品種(登録名:HL1)で、イモの形は紡錘形、大きさのそろいが良く秀品率に優れるとされています。肉質はホクホクとしたやや粉質で、糖度は紅あずまより高い傾向があるとのこと。肉色は鮮やかな黄色で、加熱後の変色(緑変)が少ないのも特徴です。
何より注目したいのが貯蔵性の高さで、長期間貯蔵しても過度に粘質になりにくいといわれています。
こうした貯蔵性・輸送耐性への強さは、産地から消費地まで距離が長い流通や、海外への輸出、冷凍加工用途などで特に評価されやすいポイントです。実際に、従来から栽培されてきた紅あずまのような品種から、栗かぐやのような新しい品種へと作付けを切り替える生産者が出てきているという業界向けの情報も見かけます。
ただし、こうした作付け転換の動きについては、生産者や産地によって状況が異なり、筆者が確認できた一次資料も限られるため、ここでは「そうした動きが一部で見られる」という程度の紹介にとどめておきますね。気になる方は、地域の農業協同組合や種苗会社が発信する最新情報を確認してみてください。
家庭菜園での栽培記録を紹介するブログやSNS投稿の中には、5月中旬に植え付けて4カ月ほど(120日前後)で収穫できたという報告も見られます。収穫直後は甘みが控えめでも、栗のようなコクとホクホク感を楽しめると紹介されており、甘みをしっかり引き出したい場合は収穫後1〜2週間ほど、暗く風通しのよい場所で保管して追熟させるとよいようです。
こちらも個人の栽培記録に基づく情報なので、栽培環境によって差が出る可能性がある点は留意しておきたいですね。
一方、「紅天使」という名前も、青果店や通販サイトなどで見かけることがあります。さつまいもの品種は年々増えており、産地や生産者によって独自の名称で販売されているケースも少なくありません。
気になる品種名に出会ったときは、パッケージや販売ページに書かれた食感の説明(ホクホク系か、ねっとり系か)を確認しながら選ぶと、失敗が少なくなりますよ。
栗かぐやのような新品種が生まれる背景には、「おいしさ」だけでなく「傷みにくさ」「形の揃いやすさ」といった、消費者からは見えにくい流通側のニーズがあるのだと筆者は感じています。
私たちが手に取る一本の裏側には、こうした育種の積み重ねがあることを知っておくと、さつまいも選びがもう少し面白く感じられるかもしれません。
糖質が気になるときの品種の選び方
糖質が気になる方は、比較的糖質が少なめとされる鳴門金時のような品種を選ぶという工夫があります。
甘みの強い紅はるかよりも、上品な甘さの鳴門金時や、クセの少ない紅あずまのほうが、食べる量を調整しやすいと感じる方もいるかもしれません。
食べ方としては、皮ごと食べる、蒸す・茹でるなど水分が飛びにくい調理法を選ぶといった工夫が知られていますが、持病がある方は自己判断せず医師や管理栄養士に相談しながら取り入れるのが安心ですね。
品種選びと味わいについて、筆者が感じること
こうして品種を並べてみると、「さつまいも=甘いホクホクした野菜」という一括りのイメージが、いかにざっくりしたものだったかを感じますね。
個人的には、紅はるかのような強い甘みが主役級の存在感を放つ一方で、紅あずまや鳴門金時のような「クセがなく脇役としても優秀な」品種の価値が、もっと見直されてもいいのではと感じています。天ぷらや煮物、お弁当のおかずとして使うなら、甘すぎない品種のほうが実は使い勝手がよいことも多いからです。
思い返せば、10年ほど前まではスーパーの焼き芋コーナーといえば鳴門金時や紅あずまが主役でした。それが紅はるかの登場以降、しっとり系が一気に存在感を増し、石焼き芋専門店や冷凍焼き芋の商品棚にまで「紅はるか」という品種名がはっきり掲げられるようになったのは、この10年ほどの大きな変化だと感じています。
また、栗かぐやのように「食味」と「貯蔵性・輸送耐性」を両立させようとする育種の流れは、家庭の食卓というより、産地から食卓までの流通全体を見据えた動きだと感じます。海外輸出や冷凍加工向けの需要が増えるなかで、傷みにくく形の揃った品種へのニーズは今後も高まっていくのではないでしょうか。
読者のみなさんにとって大切なのは、「どの品種が一番優れているか」を決めることではなく、「今日はどんな食べ方をしたいか」から逆算して品種を選ぶという視点だと思います。とろける甘さを楽しみたい日は紅はるか、素材の味を活かした料理をしたい日は紅あずまや鳴門金時、迷ったら中間タイプの紅まさりや栗かぐやを試してみる。そんな使い分けができるようになると、さつまいも選びがぐっと楽しくなるはずですよ。
まとめ
紅はるかはねっとり系で高糖度、紅あずまと鳴門金時はホクホク系で料理に使いやすく、紅まさりはその中間で親品種としても注目されています。
さらに新品種の栗かぐやはホクホク系でありながら貯蔵性と輸送耐性に優れ、紅天使のような名前も含めて、さつまいもの品種は今もどんどん広がり続けています。
食感タイプと収穫・追熟のタイミングを意識しながら選べば、いつもの一本がぐっとおいしく感じられるはずですよ。
よくある質問
紅はるかと紅あずまはどちらが甘いですか?
糖度そのものは紅はるかのほうが高い傾向にあり、ねっとりとした強い甘みが特徴です。紅あずまはホクホク系で、繊維が少なく食べやすい上品な甘さが持ち味です。
さつまいもは掘りたてよりも寝かせたほうがおいしいのですか?
はい、多くの品種でその傾向があります。掘りたてはでんぷん質が多くやや粉っぽいのですが、風通しの良い場所で数週間保存することででんぷんが糖に変わり、甘みが増していきます。
栗かぐやはどんな料理に向いていますか?
ホクホクとした粉質の食感なので、焼き芋や天ぷら、大学芋、スイートポテトなどの加工にも向いているとされています。貯蔵性が高いため、購入後にゆっくり食べきりたい場合にも扱いやすい品種です。